用語名称(日本語、外国語)
ナタデココ(ナタ・デ・ココ)
スペイン語:nata de coco(スペイン語)
意味
ナタデココとは、ココナッツの果汁を発酵させてゲル状に固めた食品です。コリコリ、あるいはクニュッとした独特の歯ごたえが特徴で、デザートや飲料の具材として広く使われています。見た目は寒天やゼリーに似ていますが、噛んだときの弾力と歯ざわりはまったく別物です。
名前はスペイン語の「nata de coco」に由来します。「nata(ナタ)」は液体の表面にできる薄い皮膜を指し、「coco(ココ)」はココナッツのことです。つまり全体で「ココナッツの皮膜」という意味になります。なお「nata」には生クリームという意味もあるため、文脈によっては「ココナッツのクリーム」と訳されることもあります。
発祥はフィリピンです。もともとは18世紀から作られていたパイナップル原料の「ナタ・デ・ピニャ(nata de piña)」があり、その代用品として、1949年にバタンガス州リパ出身の化学者テオドゥラ・カラウ・アフリカ氏によって、ココナッツを使ったナタデココが考案されたと伝えられています。
製法を簡単に説明すると、まずココナッツの実の中にある液体(ココナッツウォーター)を取り出します。そこに砂糖や酢などを加え、酢酸菌の一種であるナタ菌(アセトバクター・キシリナム)を植え付けて、1~2週間ほど発酵させます。すると液面に膜のような層ができ、これがだんだん厚みを増していきます。十分な厚さになったところで取り出し、さいの目状に切り分けたものがナタデココです。
あの独特の食感を生んでいるのは、ナタ菌が作り出すセルロースです。セルロースは植物の細胞壁の主成分として知られる成分ですが、ナタデココの場合は菌が体外に分泌したもので、ごく細い繊維が緻密に絡み合った構造をしています。私たちが食べているナタデココは、ほぼこのセルロースと水分でできているわけです。
栄養面では、文部科学省の食品成分データベースによると、ナタデココ100gあたりのエネルギーは約80kcalです。糖分を含むシロップに漬けて販売されるため数値はこの程度になりますが、ナタデココ自体は脂質をほとんど含みません。食物繊維も含まれており、こうした性質から、過去には低カロリー食品やダイエット向けの食材として注目を集めました。
用語を使う場面・対象となる食品
ナタデココが登場する場面は、主にデザートや飲み物まわりです。代表的なものをいくつか挙げると、次のような食品があります。
フルーツポンチやヨーグルト、ゼリーなどに混ぜる具材として使われます。コリコリした食感がアクセントになり、なめらかな食品と組み合わせると対比が生まれます。
タピオカドリンクやフルーツジュースといった飲料にトッピングされることもあります。ストローで吸い込んで噛む楽しさが人気です。
缶詰や瓶詰、カップ入りのシロップ漬けとして、そのまま単品で売られているのもよく見かける形態です。
日本では、1970年代後半に日本デルモンテがフルーツ缶に入れて販売したのが最初とされています。その後、食品メーカーのフジッコがデザートとして商品化しましたが、当初はあまり知られておらず、売れ行きは伸び悩んでいたようです。
転機になったのは1992年7月でした。大手ファミリーレストランのデニーズがメニューに採用し、1993年(平成5年)の春以降にテレビや雑誌などで大きく取り上げられたことで、一気に全国的なブームになりました。当時を知る人にとっては、平成初期を象徴する流行スイーツのひとつといえるでしょう。
熱狂的なブームそのものは数年で落ち着きましたが、その後も根強いファンに支えられ、現在ではコンビニやスーパーで普通に手に入る定番食材として定着しています。
ちなみに、ナタデココは食品以外の分野でも研究対象になってきました。菌が作るセルロースの繊維構造に着目し、オーディオスピーカーの振動板(コーン紙)や、薄型ディスプレイの透明基板といったハイテク素材への応用が検討された例もあります。お菓子の世界にとどまらない、興味深い素材でもあるわけです。

