用語名称(日本語、外国語)
中種法(なかだねほう)
英語:Sponge and dough method(スポンジ・アンド・ドウ法)
意味
中種法とは、パン生地のミキシング(こね)を二段階に分けて行う製法のことです。まず、配合する小麦粉の一部に水と酵母(イースト)を混ぜ合わせ、数時間ほど発酵させた生地を作ります。これを「中種(なかだね)」と呼びます。発酵を終えた中種に、残りの小麦粉や砂糖、塩、油脂などの材料を加えてもう一度こね上げ、本生地に仕立てていきます。
「中種」の語は「中間種」を縮めたもので、目的のパンを焼き上げるために途中で経由する生地、という意味合いを持ちます。あらかじめ一部の生地を発酵させてから本生地に混ぜ込む点から、中種法は「発酵種法」の一種として分類されます。
中種に使う小麦粉の割合によって呼び名が変わるのも特徴です。粉全体の70%を中種に回すものを70%中種法と呼び、製パンの技術書では基本形として紹介されることが多くなっています。同様に、粉の50%を使えば50%中種法、全量を使えば100%中種法です。割合が大きいほど中種法の効果が強く出る一方、後述する風味面のデメリットも目立ちやすくなります。なお、これらの呼び名は便宜的なもので、それぞれに正式名称が定められているわけではありません。
中種法から派生した手法もいくつかあります。砂糖を多く配合する菓子パン生地では、中種の段階に少量の砂糖を加える「加糖中種法」がよく使われます。本生地でいきなり全量の砂糖を入れると浸透圧が急に高まって酵母の働きが鈍るため、砂糖を分けて加えることでこの影響をやわらげる狙いがあります。また、ごく少量の酵母で硬めの中種を仕込み、一晩かけて発酵させる「宵種法(オーバーナイト中種法)」もあります。
中種法が支持される理由は、主に次のような利点にあります。発酵を終えた中種はグルテンがある程度つながった状態になっているため、本ごねの時間が短くて済みます。生地は扱いやすく丈夫で、機械での製造にも耐えやすくなります。焼き上がったパンはきめが細かく、ボリュームが出てやわらかい食感に仕上がりやすいのも魅力です。こうした安定性と作業効率の高さから、市販の食パンをはじめ大量生産の現場で広く採用されてきました。
一方で、見落とせない短所もあります。工程が二段階に増えるぶん、トータルの作業時間は長くなり、中種を発酵させておくスペースも必要です。さらに、発酵によってグルテンの酸化が進むため、小麦粉そのものの香りや風味はストレート法に比べて薄れる傾向があります。
なお、「中種法はストレート法より必ずパンがしっとりして老化しにくい」と語られることがありますが、これは条件つきの話です。パンの保水性に大きく関わるのは生地の「水和」であり、より長く寝かせた生地ほど水和が進みます。長時間発酵させる中種と短時間発酵のストレート法を比べれば中種法が勝りますが、30分〜1時間程度しか発酵させない短時間タイプの中種では、しっとり感がストレート法を上回るとは限りません。製法そのものより、発酵時間や作り手の技術が仕上がりを左右する面が大きいといえます。
用語を使う場面・対象となる食品
中種法は、パン作り全般、とくに製パンの製法を説明する場面で使われる言葉です。家庭でよく使われる「ストレート法(すべての材料を一度に混ぜて作る製法)」と対比される形で語られることが多くなっています。
対象となる食品としては、まず食パン(角食・山食)が代表的です。ふんわりとボリュームのある食感が求められるため、中種法との相性がよい品目です。あんぱんやクリームパンといった砂糖の配合が多い菓子パン、卵やバターをたっぷり使うブリオッシュのようなリッチな生地でも、こね上げの負担を減らせるため重宝されます。
副材料の風味を前面に出したいパンにも向いています。ココアパウダーや抹茶パウダーを練り込むパンは、これらの粉が生地のつながりを妨げやすいのですが、中種法なら伸びのよい生地が作りやすく、小麦の風味が薄れるぶん副材料の香りが際立ちます。くるみやレーズンなど大きめの具材を多く練り込むパンでも、生地を強く仕上げられるため、具材によるふくらみの低下を補えます。
反対に、バゲットやバタールといったフランスパン、その他のハード系・リーン(低配合)なパンには一般的に不向きとされます。小麦そのものの風味を味わうパンでは風味が薄れるのが惜しく、また元々こね時間が短い生地ではこねすぎてしまいやすいためです。ただし、自家製酵母を使った長時間発酵の中種で発酵由来の風味を引き出すなど、明確な狙いがある場合には、ハード系で中種法を用いることもあります。

